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大阪地方裁判所 昭和47年(わ)4362号 判決 1973年11月26日

本籍

鳴門市大麻町姫田字里九番地

住居

東大阪市岩田町四丁目二番八号

医師

喜馬通

大正七年一〇月一一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官岡島嘉彦、弁護人竹沢喜代治各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金二、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から一年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和一七年九月頃京都府立医科大学を卒業して医師となり、野戦病院、京都府立医科大学病院等に勤務したのち、同二八年頃から東大阪市で喜馬医院を開業し、同三七年二月頃から同市岩田町四丁目二番八号において喜馬病院の名称で外科医業を営んでいるものであるが、右病院の設備充実等のため資金を備蓄しようと、自己の所得税を免れることを企て、

第一、昭和四四年分の所得金額が九九六二万七七八七円で、これに対する所得税額が六二二六万五三〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上診療収入等の一部を除外し、架空経費を計上するなどの行為により、右所得金額中六七七六万九四五八円を秘匿したうえ、昭和四五年三月一六日東大阪市所在東大阪税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が三一八五万八三二九円で、これに対する所得税額が一四〇四万八二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税四八二一万七一〇〇円を免れ、

第二、昭和四五年分の所得金額が一億一七九三万四一一三円でこれに対する所得税額七三五一万九八〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、右所得金額中八一八一万一四七七円を秘匿したうえ、昭和四六年三月一五日前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が三六一二万二六三六円で、これに対する所得税額が一五八七万八〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税五七六四万一八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき、

一、被告人の当公判廷における供述

判示冒頭の事実につき

一、大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書(昭和四六年九月二一日付)

判示第一および第二の各事実につき

一、被告人の検察官に対する供述調書二通

一、大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書一〇通

一、喜馬好子、山田三郎および砂本清の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の喜馬好子に対する質問てん末書(昭和四六年九月二一日付)

一、次の者の作成した確認書

田中義人(三通)、田中俊明(昭和四七年一月一三日付)、長谷川正、鈴木信行、辻昌(二通)、和田清治、藤田哲次郎、檜垣三郎、紺田育英、林久子(二通)、山口稔、青木正一、松末明(二通)、川端吉彦(昭和四六年一二月二二日付、同四七年一月一七日付)、片岡幸雄、今藤隆石、土肥淳、杉浦十次、橋本浩一(二通)、杉山収、清水真太郎、後藤操、中田耕作、島村皖、板倉大二、藤井高尚、谷口清浩、藤井淳一、森山幸信(昭和四六年一一月一日付)、山本四郎

一、次の者の作成した回答書

角田隆英(二通)、大川文夫、山川晃央(三通)、中央信託銀行大阪支店山本(三通)、同松井(二通)、落合清隆(四通)、井手勝則(五通)、住友信託銀行証券代行部(九通)、西山宗夫(二通)、三菱信託銀行証券代行部発知三菱信託銀行証券代行部(三通)、三井信託銀行証券代行部前田、大阪証券代行高村(三通)、中田善蔵、古林幸治、森園通男、安田信託銀行証券代行部利根川、三橋一雄、泰地等、島岡覚三、堂山亀久夫、篠置格男、木坂友典、菊野篤彦

一、大蔵事務官作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書四通

一、国税査察官岡田公明作成の調査報告書六通(昭和四七年四月一三日付、同一四日付-記録第二二の三号とあるもの、同二月七日付、同四六年九月三〇日付、同四七年二月一五日付、同一二月六日付)

一、国税査察官三木政規ほか一名作成の調査報告書

判示第一の事実につき、

一、古川喜一作成の供述書

一、石川忠臣および日端晴夫各作成の各確認書

一、国税査察官岡田公明作成の調査報告書(昭和四六年九月二二日付)

一、東大阪税務署長認証の所得税申告書写(昭和四四年分)

判示第二の事実につき、

一、被告人ほか一名作成の確認書

一、大蔵事務官作成の喜馬好子(昭和四七年二月一五日付)および山田三郎に対する各質問てん末書

一、次の者の作成した確認書

喜馬好子、山田三郎、田中俊明(昭和四七年二月四日付)、保田国和、堀井英男、中井涌三、川端吉彦(昭和四六年一一月九日付)、森田隆己、森田幸信(昭和四六年一〇月二九日付)

一、橘衛および西脇実各作成の各回答書

一、国税査察官岡田公明作成の調査報告書(昭和四七年四月一四日付-記録第二二の一号とあるもの)

一、東大阪税務署長認証の所得税申告書写(昭和四五年分)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法第二三八条第一項に該当まるので、情状によりいずれも同法条第二項を適用したうえ、各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重なし、罰金刑については同法第四八条第二項により各所定罰金額(判示各逋脱額相当額)を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役一年および罰金二、〇〇〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から一年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 堀内信明)

右は謄本である。

昭和四八年一二月一一日

大阪地方裁判所第一二刑事第四係

裁判所書記官 槌屋喜久夫

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